今回ご紹介する書籍は、辻村深月さんの『かがみの孤城』(ポプラ社)です。
著者:辻村深月
あらすじ
あなたを、助けたい。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた―― なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。
https://www.poplar.co.jp/pr/kagami/
作品の魅力
2018年の『本屋大賞』に選ばれ、2022年冬には劇場アニメ化も果たした本作。
多くの方に読まれている魅力とは、一体何でしょうか。
それは『登場人物の心象描写がリアル』、この一言に尽きます。
決して難しい言葉は使われていません。どちらかといえば簡単な、それこそ主人公たちと同世代の中学生でも読める文章で書かれています。
登場人物
では早速、登場人物からご紹介します。
最初にご紹介する7人が、タイトルにもなっている「城」に招待される中学生たちです。
- 安西こころ
- アキ
- リオン
- スバル
- マサムネ
- フウカ
- ウレシノ
- オオカミさま
- 喜多嶋 晶子
- 東条 萌
- こころの母
- 伊田先生
- 真田 美織
オオカミさまからの課題
5月、オオカミさまによって「城」に招かれた彼・彼女らは、ある課題を出されます。
3月30日までに、「入った人の願いが一つだけ叶う願いの部屋」の鍵を、城の中から探し出すこと。
課題のルールと参加者の共通点
この課題には、いくつかのルールがありました。
- 願いを叶えられるのは、鍵を見つけた「ひとりだけ」
- 「願いの部屋」が開いた時点でゲームは終了し、3月30日を待たずして城は閉まる
- 毎日、城が開くのは日本時間の「朝9時から夕方5時まで」
- 5時を過ぎても城に残っていた場合、その日城に来ていた全員が「狼に食われる」
3つ目のルールで勘の良い方は気が付くことでしょう。
彼らが、学校に行っていないことに。
彼らは中学生ですが、学校には行っていません。
最初に集められた時点でお互いそのことに気が付きながらも、誰も口には出しませんでした。みんな、そのことに触れられたくないのです。
主人公こころ
物語は、主人公・こころの一人称で進んでいきます。
こころは臆病な性格で、最初は突然現れた「城」の入り口に入ろうともしませんでした。
しかし、そんな彼女にも叶えたい願いがあったのです。
――真田美織が、この世から消えますように。
引用元:『かがみの孤城』本文より
ストレートな言葉です。
静かな怒りが感じられる言葉です。
真田美織とは、こころが不登校になった原因を作った人物でした。
はじめは、この願いに背中を押されるようにして「城」を訪れたこころでしたが、他の招待者と接していくうちに、「城」が心地のいい場所となっていきました。
作品の魅力
不登校になった理由はさまざまですが、作中でこころが語っているように、「城」の中の誰もが普通の中学生となんら変わりありません。
おしゃべりをするし、ゲームをするし、お菓子を食べるし、恋もします。
だからこそ、彼らを身近に感じ、感情移入してしまうのでしょう。
私は、こころたちもですが、特に「こころの母親の心情がリアル」だと思いました。
突然、娘が不登校になってしまう。理由を聞いても答えてくれない。優しくしたいのに、つい、いらぬ言葉が出てしまう。
こころの目線で書かれているのですが、そんな母親の気持ちがひしひしと伝わってくるのです。
言葉にされなくとも態度で相手の気持ちを悟ってしまうことがありますが、まさにそのようなリアルなやり取りが描かれています。
本屋大賞にふさわしい一冊
各月ごとに章立てされており、3月という終わりが見えているため、どんどん読み進めていきたくなります。特に、第3部――3学期のスピード感は凄まじく、そして、ラストは涙必死です。
「ああ、そういうことだったのか」とすべてが繋がっていきます。
こころたちが何を考えどういった選択をするのか、ぜひ、あなた自身の目で見届けてください。
まさに、本屋大賞にふさわしい一冊です。
著者:辻村深月
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