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本の感想

『旅屋おかえり』原田マハ・著 を読んだ感想|誰かの代わりに旅をする温かい物語

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『旅屋おかえり』

売れないアラサータレントの「おかえり」こと丘えりかは、あることを機に、旅に出られない人の代わりに旅をする「旅代理業」を始めます。伏線の貼り方や感情描写が抜群にうまく、何度も涙せずにはいられない原田マハさんの傑作小説です!

今回紹介する作品は?

こんにちは! 読書は推し活・晴星(せい)です。

今回紹介する『旅屋おかえり』は、原田マハさんが2014年に発表した長編小説で、第12回エキナカ書店大賞を受賞した話題作です。

2022年にはNHK BSプレミアムで安藤サクラさん主演でドラマ化され、2023年には続編も放送されました。

売れないタレントの主人公が、誰かの代わりに旅をする「旅代理業」を始めるという一風変わった設定から始まる物語。読み進めるうちに、人と人とのつながりの温かさに心を打たれること間違いなしの作品です。

旅屋おかえり

著者:原田マハ

出版社:集英社

ドラマ化

あらすじ

主人公の「おかえり」こと丘えりかは、売れないアラサータレント。「よろずやプロ」という小さな芸能事務所で、社長の萬鉄壁(よろず てっぺき)と副社長の澄川のんのと共に細々と活動しています。

唯一のレギュラー番組だった旅番組が打ち切りになり、絶体絶命の状況に追い込まれたとき、ある特別な依頼が舞い込みます。

それは、難病の娘の代わりに旅をしてほしいという、お母さんからの切実な願いでした。旅に出ることができない娘のために、おかえりが代理で旅をして、その様子を撮影してほしいというのです。

この依頼をきっかけに、おかえりは旅に出られない人の代わりに旅をする旅代理業「旅屋」として新たなスタートを切ることになります。依頼人の想いを背負い、様々な場所を訪れながら、人と人とのつながりを深めていく心温まる物語です。

本書の3つの魅力ポイント

  • 伏線の貼り方や感情描写が抜群にうまく感動できる
  • 主人公・おかえりの愛されキャラクターと温かい人間関係
  • 第1部と第2部で構成された構成で、展開にメリハリがある

感想(ネタバレなし)

本作は、2部構成となっています。1〜6章が第1部、7〜12章が第2部です。

第1部は「旅屋」を始めるきっかけとなる依頼について、第2部では社長である鉄壁の過去も絡んだ新たな依頼について描かれています。

私は、第1部の終わりで泣き、クライマックスの10章・11章でもボロ泣きしてしまいました。

「あらすじ」としては他でもありそうな、言ってしまえば「平凡」な話かもしれません。しかし、伏線の貼り方や主人公の”おかえり”の愛される性格、感情の描き方などが抜群にうまいから、感動できました。

特に第1部の依頼人の親の愛情には心を打たれました。娘のために何かしてあげたいという親心が、とても丁寧に描かれています。

第2部では本格的に「旅屋」を仕事として始めた”おかえり”の半年間がダイジェストで語られ、そして、鉄壁の過去にも関わる依頼がやってきます。これがまた心に響く深い話で、読んでいて胸が熱くなりました。

原田マハさんの文章は本当に読みやすく、あっという間に物語の世界に引き込まれてしまいます。旅の描写も美しく、読んでいるだけで旅をしている気分になれるのも魅力の一つです。

こんな人におすすめです!

  • 心温まる物語が読みたい人 – 人情に溢れた優しい物語です
  • 旅が好きな人 – 様々な土地の美しい描写が楽しめます
  • 感動作品を求めている人 – 自然と涙が流れる場面が何度もあります
  • 原田マハ作品初心者 – 読みやすく、原田マハワールドの入門編としても最適
  • ドラマを見た人 – 原作ならではの詳細な心理描写が楽しめます

こんな人には向かないかも……

  • スピード感のあるストーリー展開を求める人
  • 複雑なトリックや謎解きを期待する人
  • シビアな現実描写やダークな展開を好む人

旅屋おかえり

著者:原田マハ

出版社:集英社

ドラマ化

原田マハさんの他作品

他の作品もぜひチェックしてみてください。『旅屋おかえり』のもう一つの依頼が収録された『丘の上の賢人 旅屋おかえり』という作品もオススメです!

※以降は、ネタバレありの感想を書いております。未読の方でお話の内容を知りたくないという方は、こちらでUターンをお願いいたします!

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感想(ネタバレあり)

第1部について

事務所唯一のタレントである”おかえり”のレギュラー番組が打ち切りになったことで、よろずやプロの3人全員が路頭に迷いそうになっていた時に、ALSの娘を持つ女性から依頼が持ちかけられます。

動けなくなった娘の代わりに、旅をしてほしい。

“おかえり”が旅をする様子を見ることで、延命治療を受け入れてほしいという、非常に重い依頼内容。依頼をすぐに受け入れるのではなく、葛藤する心理描写が現実的でよかったです。

「1人でどうやって撮影するの?」と思っていたら、元番組のスタッフが集まってくれたり、雨が降り絶望的な展開から、晴天がやってきたり、物語の緩急がうまいなあと思いました。

アラサーながら純粋さもある”おかえり”のことが、どんどん好きになっていきます。

旅の様子をどうやって描写するのだろうと思いましたが、文字だけなのにどのような動画か想像することができました。パソコンもろくに触ったことがなかったのに、2日間で編集をしてしまう社長って有能すぎませんか?

そして、依頼人の父の愛情には本当に感動しました。花の香りはどういう意味だろうと疑問を抱きながらも、あまり深く考えないまま読み進めていきましたが、まさかの隣の病室に生け花を活けに来ていたという……。この事実が明かされるまでは「ひどい父親」に映っていたのに、他人の視点から人の本質はわかりませんね。

第2部の展開

第2部では江戸ソース会長からの依頼が中心となります。これが鉄壁の過去にもつながる話でした。

社長の過去に何かがあったということは、第1部の時点で語られています。高校生だった”おかえり”をスカウトした時、「娘も……」と言葉を濁す場面で、「ああ、もう娘さんはいないのかな?」と予感していました。

第1部が終わった時点で、社長の過去について語られる可能性もあるし、主人公の地元のことも繰り返し描写されていましたから、そちらに帰る?旅する?展開になる可能性もあるなあと思っていましたが、本作では前者でしたね。

別れた妻が社長を恨んでいる理由は「娘よりも仕事を優先したから」というものでした。この設定自体はありきたりといえばありきたりなんですが、ただ、やはり感動できたんです。

それはきっと、登場人物たちの感情の描き方がうまいから。また、主人公たちの行動原理に違和感がなく、納得できる展開になっているからではないでしょうか。

妻の心境の変化

頑なだった元妻が主人公を墓に連れて行く気になったのは、娘が夢枕に立ったから、という理由は自然だと思いました。

主人公目線で、「きっと彼女も社長のことを許したかったのではないか」「今まで頑なだったのは許してしまったら娘への裏切りになってしまうかもと思ったからではないか」と推察が語られます。こうした考えが物語の中にそっと挟まることで、読者は、元妻が急に意見を変えたことに納得できるんです。

読後の想い

読み終えて、大好きな話がまたひとつ増えました。私は、なぜか本作を連作短編だと思っていたんですよね。冒頭の数ページだけ以前読んでおり、その時に、旅ごとの短編が何作か入っていると勘違いしたんです。連作短編の気分じゃなかったため、続きを読まずに置いていたのですが、もっと早く読めばよかったと後悔しています。

こんなふうに、積まれた本の中には、心を動かされる物語がまだまだ眠っているんでしょうね。この作品を読んで、改めて読書の楽しさを実感しました。

著者・原田マハ さんについて

原田マハさんは、1962年東京都生まれの小説家・キュレーター(学芸員と似た職業)・カルチャーエッセイストです。

関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科を卒業後、馬里邑美術館、伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館に勤務。2002年にフリーのキュレーターとして独立し、2006年に作家デビューしました。

美術の造詣が深く、有名絵画をモチーフにしたアート小説で知られていますが、『旅屋おかえり』のような心温まるヒューマンドラマも手がける多彩な作家です。

2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞を受賞するなど、数多くの文学賞を受賞している実力派作家でもあります。

ペンネームは、フランシスコ・ゴヤの「着衣のマハ」「裸のマハ」に由来しており、兄は同じく小説家の原田宗典さんです。

この記事を書いた人
駿河 晴星(Suruga Sei)

フリーアトリエ晴星へようこそ!
駿河 晴星(するが せい)と申します。

感興の赴くままに、小説や詩を執筆したり、YouTubeに動画を投稿したり、ベースを弾いたり、プログラミングをしたりしています。

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