映画『国宝』
3時間10分があっという間!吉沢亮と横浜流星が1年半の稽古を経て挑んだ、歌舞伎を題材にした圧巻の人間ドラマ。初週わずか3.4億円から口コミで広がり、22年ぶりに邦画実写歴代1位の記録を樹立。カンヌ国際映画祭で6分間のスタンディングオベーション、アカデミー賞ショートリスト入りと、2025年を代表する歴史的作品となった傑作です!
▶️動画でもご紹介しています!
今回紹介する作品は?
こんにちは! 晴星(せい)です。
今回は、映画『国宝』を観た感想です!
3時間10分と長い映画ですが、あっという間で最高でした。
お客さんの年齢層が高いなあと感じましたが、ぜひ若い方も含め、いろんな方に観ていただきたいです!
原作小説『国宝』について
▶️原作小説を読んだ感想も、動画でご紹介しています!
映画の基本情報
映画の3つの魅力ポイント
- 吉沢亮・横浜流星の1年半に及ぶ歌舞伎稽古を経た圧倒的演技
- 映画ならではの視覚体験 – 役者の表情を間近で感じられる臨場感
- 原作の核を残しつつ、3時間10分に凝縮された巧みな脚本
映画公開後の歴史的快挙
初週から予想できなかった大ヒット
私が映画『国宝』を観たのは映画公開の初週でしたから、正直に言うと、ここまで大ヒットするとは思っていませんでした。
初週末の興行収入はわずか3.4億円。通常、興行収入100億円を突破する作品は、初週末に10億円前後かそれ以上の成績を上げることが多いんです。
でも『国宝』は全く違いました。口コミとSNSでの高い評価を追い風に、4週連続で前週比を上回るという異例の記録を達成したんです。これは、2018年の『ボヘミアン・ラプソディ』以来の快挙でした。
驚異的な興行成績
映画『国宝』は、2025年12月時点で興行収入178.7億円超、観客動員1,231万人を突破しました。
これは、邦画実写として22年ぶりに歴代記録を塗り替えたことを意味します。2003年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の173.5億円を上回り、邦画実写の歴代1位に躍り出たんです!
8月17日、公開からわずか73日間で興行収入100億円を突破。邦画実写作品としては、22年ぶり4本目の快挙となりました。
半年経ってもまだ映画館で観ることが可能ですし、この持続力は本当にすごいですよね。
海外での評価
8月28日、映画『国宝』は第98回米アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品に決定しました。
そして12月17日、さらなる朗報が届きます。『国宝』が、国際長編映画賞とメイク&ヘアスタイリング賞の2部門で、アカデミー賞のショートリストに選ばれたんです!
日本作品が2部門同時にショートリスト入りするのは、注目すべき快挙です。今後、アカデミー会員によるノミネーション投票を経て、両部門とも5作品に絞り込まれます。ノミネート作品の発表は、2026年1月22日に行われる予定です。
ちなみに、ハリウッドでも『国宝』への注目度は高く、なんとトム・クルーズが主催で上映会を開催したことでも話題になりました。2026年2月には北米での公開も決定しており、世界的な評価がどこまで広がるのか、本当に楽しみですね。
国内での受賞
また、国内での受賞も続いています。
原作小説も大ヒット
映画だけではありません。原作小説『国宝』も、累計発行部数200万部を突破する記録的なベストセラーとなっています。
さらに、2025年の年間ベストセラーでは、日販、トーハン、オリコンの3社すべてで文庫部門第1位を獲得しました。映画と原作小説、両方が2025年を代表する作品となったんですね。
特別展覧会開催
このブームを記念して、2026年1月7日から1月28日まで、Ginza Sony Parkで『映画「国宝」展 ― 熱狂は終わらない、物語は続く ―』が開催される予定です。
劇中の名場面をとらえた写真展示や、主題歌「Luminance」を立体音響空間で鑑賞できるなど、映画の世界観を追体験できる内容になっているそうです。
映画を観たすべての人への感謝を込めた展覧会とのことなので、映画を観た人はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
こんな人におすすめ
こんな人には向かないかも……
吉田修一さんの他作品
他の作品もぜひチェックしてみてください!
※以降は、ネタバレありの感想を書いております。未視聴の方でお話の内容を知りたくないという方は、こちらでUターンをお願いいたします!
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感想(ネタバレあり)
少年時代の演技が素晴らしい
まず印象的だったのが、少年時代を演じた喜久雄役・黒川想矢さんと、俊介役・越山敬達さんの演技でした。特に黒川想矢さんがうまかった!
あとで調べたら、実写版『【推しの子】』でカミキヒカルの子ども時代を演じていた役者さんでした!あの時も独特な雰囲気で印象的でしたが、今回もよかったです。
演目「関の扉」での女形の演技もさることながら、喜久雄らしい陰の雰囲気が感じられました。
後半のシーンで、大人になった喜久雄を演じる吉沢亮さんと重なる部分があったんですよね。吉沢亮さん演じる喜久雄が、中村鴈治郎さん演じる吾妻千五郎に役をもらいにいったシーンで、千五郎の言葉を聞いた時の喜久雄の目が、少年役の黒川さんの目と似ていると思ったんです。
どこがと具体的に言えるわけではないんだけど、目の形なのか、光の入り具合なのか。もしかしたらしっかり見比べると違うかもしれないけど、少年役と大人役、二人の役者がつながっているように私には感じられました。
物語の構成について
物語の構成としては、原作から変更された部分もありました。
特に、原作小説で存在感を放っていた弁天は丸々カット。徳次に関しては少年時代に少しだけいたんだけど、大阪に舞台が移ると消えてしまいました……。
残念ではあるけど、映画の構成を考えると仕方がないかなあと思います。
映画のセオリーとして、主軸となる「メインプロット」が1つ、メインプロットを彩る「サブプロット」が2つで構成されると言われています。
今回の映画の場合は、
- メインプロット – 役者の頂点を極める喜久雄の成長
- サブプロット1 – ライバルであり親友でもある俊介との関係
- サブプロット2 – 家族(喜久雄の恋人たちや娘)との関係
です。
もしかしたら、違う見方もあるかもしれませんが、私はそのように捉えました。
この3つのプロット(筋書き)が順番に起こって、一つの映画になっていきます。逆にいうと、この3つ以外の要素を入れると、話がとっ散らかってしまう危険性が高いんですね。
小説にあった「喜久雄と徳次の義兄弟のような関係」や「芸人という異なる芸の道を読者に示す弁天」といった異なる要素を、時間の制約がある映画に入れることは難しい。
それを理解はしていても、やはり、小説で濃密なエピソードの数々を知っている分、若干の物足りなさは感じました。
しかし、物足りなさから感じる不満は、役者さんたちの演技を見れば見るほど薄れていきました。
吉沢亮さんの圧倒的演技
特に、主演の吉沢亮さんの怪演っぷりが素晴らしかった。
師匠・花井半次郎の代役を務めた「曽根崎心中」。映像編集のカットの仕方や、カメラの寄り方も関係しているのかもしれませんが、鬼気迫るものがあり、お初が乗り移った喜久雄として、そこに生きていました。
そして、吉沢亮さんの色っぽさにはたまげました。歌舞伎の衣装を着て化粧をしている時に色っぽいのはまだ分かりますが、普段着のシーンでもたまらなく色っぽい。指の先までしなやかで、繊細さが見てとれます。
普段、歌舞伎や舞台を見る時は、演目の役柄の気持ちに寄り添って観劇していて、演じている役者さんたちの人生や関係性を考えることはありません。
しかし、この映画では役を演じている喜久雄や俊介の気持ちになって、演目を見ることができました。
「藤娘」「二人道成寺」「曽根崎心中」「鷺娘」など、さまざまな演目をしていましたが、その演目というのは映画の視聴者からは遠いところにあって、その前に大きな存在として喜久雄や俊介たちがいる。彼らを通して、うっすらと演目の一部が映っている。
感覚的すぎる話で分かりづらかったらすみません。とにかく私は、歌舞伎を見ているのではなく、『国宝』という作品の中に入って観劇しているような感覚だったんです。
横浜流星さん演じる俊介
吉沢亮さんに対して、横浜流星さんはちょっとオスらしさが残っているというか、喜久雄とは対照的な陽の雰囲気を感じました。ちょっと強すぎる感じ?
もちろん悪いという意味ではなくて、俊介という役がそういう人だったのだろうと思います。
病室を飛び出す俊介と追いかける喜久雄のシーン、少年時代の下校中に立ち寄った橋の上で話しているのがエモかったですね。怒りを抱く俊介が冗談めかす様子も寂しげで、二人の関係の変化がよく表現されていました。
余談ですが、私が横浜流星さんの演技を初めて見たのは、2025年大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』だったんよね。毎週、髷姿を見ていてそれに慣れているものだから、髪の毛を下ろしている横浜流星さんの姿が新鮮でした(笑)
豊かなキャラクターたち
主演級2人以外の役者さんたちも最高でした。
万菊役の田中泯さんの喋り方が素晴らしかったし、寺島しのぶさんの、俊介の母としての葛藤の演技も感情が伝わってきました。嶋田久作さんは、梅木のイメージにピッタリだったなあ。歌舞伎を愛している人ではあるんだけど、ちょっと胡散臭そうな感じ。
カット割りの巧みさ
今回の映画は、個人的にカット割りが好きでした。今の場面と次の場面が何度か交互に映されてから次の場面に映っていく。
50年間という長い物語であるため、どうしても年数がどんどん飛んでいきますが、このカット割りのおかげか、時間経過が違和感なく感じられました。
歌舞伎の演目の場面と登場人物たちの場面が、交互に映される部分もありました。
花井半次郎の代役で「曽根崎心中」を演じる喜久雄と、手と手を取り合い逃亡する俊介と春江の場面。舞台の幕が閉じたあと、青白い光の中で一人取り残される喜久雄が哀れで哀れでならなかった。
芸を極めていけばいくほど、孤独になっていく。そんな喜久雄の生き様の切なさが、あのシーンに集約されていたように思います。
映画ならではの視覚体験
歌舞伎など舞台芸術は、引きの芸術。お客さんから役者の顔がしっかり見えることは少なく、遠くから眺めるようにして楽しみます。
しかし、これが映画となると、役者の顔にぐっとカメラが寄ります。眉の傾き、目の潤み、白粉を伝う涙の線までしっかりと見えて、登場人物の心情へ没入することができました。
また、舞台裏の様子や、引き抜き(観客の前で一瞬にして衣裳を変化させる仕掛け)のため舞台上で後見が手伝っている様子を間近で見られたのもよかったです。
歌舞伎を観にいくだけでは決して見られない部分であるため、小説を読んでいる時は想像で補うしかありませんでしたが、この映画で観ることで、今後イメージすることができるようになりました。
家族との複雑な関係
喜久雄と娘の綾乃の関係も、短いながらも印象深く描かれていました。
まだ幼い娘に会いに行くシーンで、たまにしか来ない父を無邪気に慕っている綾乃でしたが、予告にもあった神社へのお参りのシーンがやってきます。
「他に何もいらないから、歌舞伎が上手くなるよう悪魔と取引した」
と娘の前で言ってしまう喜久雄の無神経さ。無邪気だった綾乃から笑顔が無くなるこのシーンは、本当に切なかったです。
その後も、役をもらうために彰子を口説いたり、人間としてのクズっぷりを発揮していく喜久雄ですが、ラストシーンの綾乃の言葉にすべて集約されていますよね。
人としては最低かもしれない。様々なものを犠牲にし、傷つけてきた。しかし、役者としての彼はやはり素晴らしい。
様々なエピソードは削りながらも、原作の核となる部分を巧みに残した脚本に、脱帽です。
クライマックスの圧巻シーン
どの演目も印象的ではありましたが、やはりクライマックスである、2回目の「曽根崎心中」は唸りました。
糖尿病によって壊死しかけている俊介の足先。その足に縋る立役の喜久雄。小説でこんな演出ってありましたっけ?
喜久雄・俊介の人生と、演目「曽根崎心中」との、あまりにも美しい重なり合いでした。
ラストシーンとエンドロールの感動
ラストシーンは小説とは少し違いましたね。人間国宝に認定されたことを知っており、「鷺娘」を踊りきった喜久雄が舞台の上にいる状態でエンドロール。
エンドロールで、King Gnuの井口さんの歌声が響いてきて、また泣けてきました。
小説のラストについては、前の動画で話した通り、どうなったのか曖昧な終わり方でしたから、映画の終わり方として今回のものは、分かりやすくていいなあと思いました。
ラストシーンにもあったように、映画ではたびたび、何かが舞い落ちる映像が象徴的に挟まれていました。長崎の料亭で見た空から降ってくる雪や、舞台上で舞う紙吹雪。いずれも、いつまでも降り続くことはないものですよね。
雪はいつか止みますし、紙吹雪だって演目が終われば舞うことはなくなる。そこに刹那の儚さを感じました。
フィクション性の魅力
師匠の代役を務めることになり、震えが止まらない喜久雄の化粧を俊介がしてあげるシーンが好きでした。
「俊ぼんの血ぃコップに入れてガブガブ飲みたいわ」
という喜久雄のセリフ。
現実の歌舞伎の世界では、血筋の人を押し除けて、部屋子が襲名というのは、やはりありえないそうです。歌舞伎のお家に生まれた寺島しのぶさんが語っていました。
つまり、そこが本作の圧倒的にフィクションな部分。綿密な取材をされ、他がとてもリアルな分、こういった物語でしかありえないフィクション性があるというのが好きですね。そこに、物語を作る意義があると思います。
他の方々の視点が気になる
最後は、私以外の方々は本作について、どう感じられたんだろうなあ、という話です。
歌舞伎ファンの方たちからすると、吉沢亮さんや横浜流星さんの演技ってどうだったんでしょうか?
舞台裏などを見られるというだけで、歌舞伎ファンなら一見の価値ありの映画だと素人目には思ってしまいますが、どう感じられるのか気になります!
また、映画しか観ていない方には、この映画はどう映ったんでしょうか。
私は先に小説を読んでいたため、「ああ、このシーンの裏にはああいうことがあったな」とか、「あの出来事があったから登場人物たちはこういう感情でいるんだろうな」ということを想像で補うことができました。
しかし、そういった補足情報がないまま観た方に、この映画がどう映ったのか気になります!
監督・李相日 について
李相日(り さんいる)監督は、1974年生まれの映画監督です。
2006年『フラガール』で第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞。2010年『悪人』でモントリオール世界映画祭、2013年『許されざる者』でベネチア国際映画祭、2016年『怒り』でトロント国際映画祭やサン・セバスティアン国際映画祭に参加しました。
吉田修一原作作品の映画化は『悪人』『怒り』に続き本作が3作目。カンヌ国際映画祭への選出は『国宝』が初となります。
人間の内面を深く掘り下げる作風で知られ、俳優の演技を最大限に引き出す演出に定評があります。『国宝』では吉沢亮と横浜流星に1年半の歌舞伎稽古を課し、本物の歌舞伎に迫る演技を実現させました。
原作者・吉田修一 さんについて
吉田修一さんは、1968年生まれの小説家です。1997年に『最後の息子』で第84回文學界新人賞を受賞し、小説家デビューしました。2002年に『パレード』で第15回山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で第127回芥川龍之介賞を受賞し、その後も『悪人』『怒り』など数多くの話題作を発表されています。
日常的な人間関係や現代社会を舞台にしながら、リアルで生々しい人物描写と巧みな語り口で読者を引き込む作風で多くの読者に愛されている吉田先生。純文学とエンターテインメント小説の両方で高い評価を受けており、ジャンルにとらわれない多彩な作品を生み出しています。
『国宝』は作家生活20周年記念作品として位置づけられ、3年間にわたる徹底取材により生まれた傑作。まさに芸能小説の金字塔と言える作品です。
まとめ
映画『国宝』は、原作の魅力を損なうことなく、映画独自の表現で素晴らしい作品に仕上がっていました。
吉沢亮さんと横浜流星さんの演技、李相日監督の演出、豪華キャストの共演、そして歌舞伎という日本の伝統芸能への深い敬意。すべてが調和して、本当に美しい作品になっています。
3時間10分という長さを感じさせない、圧巻の映画体験でした。
初週末わずか3.4億円から始まった映画が、口コミで広がり、22年ぶりの記録を打ち立て、さらにはアカデミー賞のショートリストにまで選ばれる。2025年を語る上で、『国宝』は欠かせない作品となりました。
ぜひ劇場で、この素晴らしい作品を体験してください!
そして、映画を見た方は、ぜひ原作も手に取り、映画で端折られた登場人物たちやエピソードも楽しんでいただけると、作品のファンとして嬉しいです。
皆さんの感想も、ぜひ教えてください!


