書籍情報
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あらすじ
舞台は紀元前。
奴隷の身分にありながら、豊かな教養と観察眼、判断力、そしてそれらを駆使して行動を起こす度胸を兼ね備えた、不思議な青年・エウメネスがいた。あの偉大なる哲学者・アリストテレスの逃亡を助けたりしながら、彼が目指していたのは、「故郷」と呼ぶカルディアの街……。
のちにアレキサンダー大王の書記官となるエウメネスの、波乱に満ちた生涯を描いた歴史大作が登場!
オススメポイント
本作をオススメするかは、正直悩みました。というのも、最新刊が出るまでに数年を要する作品だからです。
最新の第12巻は2024年6月21日に発売されたんやけど、なんとこれが5年ぶりの刊行でした。また雑誌連載も、2025年前半現在、長期休載中となっています。
2025年7月には65歳になられる岩明先生。利き腕の麻痺や目のかすみなどの健康上の問題を抱えており、一生懸命書かれてはいるものの、なかなか若い頃と同じペースで描くことが難しい状況のようです。
ただ本作は、大ヒットした『寄生獣』よりも前、さらに言えば、デビュー前から温めていた作品だそうで、 そのおもしろさは間違いありません。
12巻までの内容でも十分、古代ギリシアの魅力を味わうことができるので、「最新刊を待つ覚悟があるから、読んでみたい!」という方は、ぜひあらすじとオススメポイントを聞いていってください。
オススメポイント1:魅力的な主人公
主人公・エウメネスは、豊かな教養を持った青年です。幼いころから神童と言われていて、運動神経も高く、手先も器用。言うことなしのチート級の能力を持ってる人なんやけどその出自が「スキタイ人」だったということで、
一度、奴隷身分に墜ちてしまいます。
「エウメネスがスキタイ人で奴隷だった」というのは本作の創作設定で、実際には、エウメネスが書記官になる前の暮らしはよく分かっていません。
物語では、一度奴隷身分に落ちたものの、その高い能力を使って這い上がり、最終的にアレクサンドロス大王の書記官まで上り詰めるというサクセスストーリーとなっています。
特に魅力的なのが、エウメネスの飄々とした性格です。どんな窮地に立たされても冷静さを失わず、持ち前の聡明さで周囲を驚かせる。そんな一風変わった主人公だから古代ギリシアの激動の時代を生き抜く姿に引き込まれるんよね。
オススメポイント2:歴史考証の緻密さ
アレクサンドロス大王をはじめ、哲学者のアリストテレスや、マケドニア王国の国王・フィリッポス2世など、歴史上の実在した人物が多数登場します。
『ヒストリエ』は歴史考証が非常に緻密で、古代ギリシアの建築物や衣装、生活様式や制度などを克明に再現しています。また、民族の違いから生まれる文化的衝突やアイデンティティの問題も巧みに描かれており、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえます。
オススメポイント3:人間ドラマと心理描写
本作では、権力者から奴隷まで、様々な立場の人々の思惑や感情、生き様が繊細に描かれています。
あくまで視点はエウメネスですが、「蛮族」と呼ばれる人々や、力を持たない奴隷たちの感情も、彼らの表情や身振りによって、しっかりと伝わってくるんよね。
歴史上の出来事が単なる事実の羅列ではなく、様々な人間の織りなすドラマとして描かれることで、2000年以上前の世界が、現代の私たちにも強く共感できるものとなっています。
世界史の授業で覚えられなかったカタカナの名前も、この漫画を読むと自然と頭に入ってくるのは、キャラクターとして魅力的に描かれているからやね。
ギリシャ神話の登場人物・オデュッセウスの英雄譚に、エウメネスが憧れているという設定も個人的に好きです。何千年も前の人たちも物語に心を動かされていたんやなって、 親近感を覚えるから。
「なんとか完結していただきたいけど、中途半端に終わってほしくもない」というジレンマがある本作。
古代ギリシアのことを知るにはうってつけの作品のため、ぜひたくさんの方に手に取っていただきたいです!