書籍情報
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あらすじ
千年期の終わり頃、あらゆる地に現れ暴虐の限りを尽くした最強の民族、ヴァイキング。そのなかにあってなお、最強と謳われた伝説の戦士が息子をひとり授かった。トルフィンと名づけられた彼は、幼くして戦場を生き場所とし、血煙の彼方に幻の大陸“ヴィンランド”を目指す!!
『プラネテス』の幸村誠が描く最強民族(ヴァイキング)叙事詩、堂々登場!
オススメポイント
2019年からアニメ化もされており、2025年3月時点で、原作1〜8巻に該当する第1シーズンと、8〜15巻に該当する第2シーズンまで放送されています。
オススメポイント1:復讐だけで終わらない点
本作は、大きく分けて2部に分かれています。
第1部はアニメの第1期にあたる1〜8巻。父親を殺害した男に復讐するため、戦士として生きる少年時代の物語です。
第2部は、アニメの第2期以降にあたる8巻以降で、復讐相手を失い、生きる意味をなくしたトルフィンが、「戦争も奴隷もない平和な国」を作るため、ヴィンランドという地を目指す成人後の物語です。
「ヴィンランド」は北アメリカ大陸にあったとされるヴァイキングの入植地のひとつです。
タイトルについて、「ヴィンランド」はその北アメリカ大陸の地で、「サガ」は物語っていう意味なんよね。つまり『ヴィンランド・サガ』は「ヴィンランドの物語」という意味になります。
このタイトルから考えると、第1部が序章、第2部が本当に描きたかった、本作の中心と言えるでしょう。第1部も序章と呼ぶには濃厚すぎるんやけどね。
「復讐するため少年が旅に出る」みたいな話はよくありますが、その後を描いているところが魅力的です。
オススメポイント2:綿密な歴史考証
第1部は、11世紀のデンマーク王によるイングランド襲撃など、史実に基づいた展開で勉強になります。キャラクターも、クヌート王やレイフ・エリクソンなど、実在した人物をベースにしているんよね。
幸村先生の描く人物や建物、船、武器などはとても写実的で、当時の文化や生活が細部まで伝わってきます。
また、ヴァイキング時代の社会構造や価値観もしっかりと描かれています。「武勇と富こそ男の価値」「戦わないやつは臆病者」という ヴァイキング社会の常識を明確に読者に伝えているからこそ、トルフィンが模索する新しい生き方にも説得力があります。
オススメポイント3:心理描写の深さ
第1部で犯した人殺しの罪に苦しむトルフィンは、第2部になっても、寝るたびに「自分が手にかけた人たちの怨霊」が夢に現れ、うなされ続けています。
奴隷身分まで落ちて農場で働くトルフィンの姿は、第1部の、短剣を手に戦いに明け暮れていた姿とはまったく違います。無気力の状態から、心の傷を癒やし、本当の強さを見つけていく過程がとても繊細に描かれているんよね。
「主人公最強!」「チート」「無敵」な漫画も、読んでてスカッとするから嫌いじゃないですが、『ヴィンランド・サガ』の一見地味だけど真の強さを追求する、トルフィンの姿を見守りたくなる、そんな作品です。