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書籍情報
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あらすじ
「いいですとも。あした、晴れるようならね」
スコットランドの小島の別荘で、哲学者ラムジー氏の妻は末息子に約束した。少年はあの夢の塔に行けると胸を躍らせる。
そして十年の時が過ぎ、第一次大戦を経て一家は母と子二人を失い、再び別荘に集うのだったーー。
二日間のできごとを綴ることによって愛の力を描き出し、文学史を永遠に塗り替え、女性作家の地歩をも確立したイギリス文学の傑作。
(解説・津村記久子)
スコットランドの小島の別荘で、哲学者ラムジー氏の妻は末息子に約束した。少年はあの夢の塔に行けると胸を躍らせる。
そして十年の時が過ぎ、第一次大戦を経て一家は母と子二人を失い、再び別荘に集うのだったーー。
二日間のできごとを綴ることによって愛の力を描き出し、文学史を永遠に塗り替え、女性作家の地歩をも確立したイギリス文学の傑作。
(解説・津村記久子)
オススメポイント
イギリスの女性作家、ヴァージニア・ウルフが1927年に発表した作品です。
もう100年近く前の作品なんですが、2024年、鴻巣友季子さんによる新訳版が出て話題となりました。
この作品は、モダニズム文学の金字塔です。
「モダニズム文学」って聞いて、「なにそれ?」って思った方もいるかもしれませんね。
簡単に説明すると、1920年前後、第一次世界大戦後のイギリスを中心に起こった、文学の流れのことです。
それまでの小説は、時間が順番に進んで、ストーリーがはっきりしていました。でもモダニズム文学は違います。
時間がバラバラに飛んだり、過去と現在が混ざったり。ストーリーよりも、人の「心の動き」を描くことを重視しました。
特徴的なのが「意識の流れ」という手法。
例えば、授業中にこんなふうに考えることってありませんか?
「先生の話聞かなきゃ……でもお腹すいたな……昼ごはん何かな……あ、そういえば昨日見たアニメ面白かったな……」
こんなふうに、人の頭の中って、一つのことをずっと考えてるんじゃなくて、色んな考えがぐるぐる回ってますよね。これをそのまま文章にしたのが「意識の流れ」です。
第一次世界大戦後、ヨーロッパの人たちは「理性的に物事を進めてきたはずなのに、なんでこんな悲惨な戦争が起きたんだ?」って疑問を持ちました。
それで、「人間の心の奥底には、もっと複雑で理屈じゃ説明できないものがあるんじゃないか」って考えて、それを表現しようとしたんですね。
『灯台へ』は、まさにそのモダニズム文学の代表作です。
舞台はスコットランドの避暑地にある別荘。ラムジー一家が毎年夏を過ごす場所です。
物語は三部構成になっていて、第一部「窓」では、ある夏の一日が描かれます。ラムジー夫人を中心に、家族や客人たちの内面が丁寧に綴られていきます。
第二部「時は過ぎゆく」では、第一次世界大戦を挟んで十年の歳月が流れます。この部分がとても印象的で、人の死や家の荒廃が、まるで時の流れそのもののように淡々と語られるんよね。
そして第三部「灯台へ」で、残された家族が再び別荘を訪れ、十年前には果たせなかった灯台への航海を実現させます。
ウルフの文章は美しくて、特に自然描写が素晴らしいです。
海の波、夕暮れの光、庭の花々。それらが登場人物の心情と重なり合って、詩的な世界を作り出しています。
ただ正直に言うと、この本、めちゃくちゃ読みにくいです。 私も最初読んだ時、何度も挫折しかけました……。
普通の小説のように「こういうことが起きて、次にこうなって」という明確なストーリー展開はほとんどありません。
また、『今どんな場面なのか』『誰の視点なのか』といった説明もありません。
急に過去に飛んだり、Aさんの視点で描かれていると思ったら、段落を変えることもなくBさんの視点に移っていたりします。
もともと海外文学って、神の視点で描かれることが多くて、日本文学よりも視点の移動が多いと思うんですが、『灯台へ』はもうそんな問題じゃないんです。
集中して読んでいないと、すぐに「なんのことを話しているんだろう?」と、物語から振り落とされます。
難解と言われるヴァージニア・ウルフの作品ですが、本当に難しかった。
でも、だからこそ価値があると思いました。
現代って、YouTube動画も、SNSも、漫画も、すぐに「わかる」「おもしろい」ってなるコンテンツばかりですよね。
しかし『灯台へ』は、すぐには理解できない。何度も読み返さないとわからない。
この「すぐにはわからない」っていう経験が、実はめちゃくちゃ貴重やなあと思いました。
現実世界って物語と違ってわからないことだらけじゃないですか。将来のこと、自分が本当にやりたいこと、親や友達など周囲の人の本当の気持ち。
『灯台へ』を読むのは、そういう「すぐにわからないものと向き合う練習」になるんだと思います。
特に印象的だったのは、ラムジー夫人の存在感です。彼女は第一部の中心人物で、家族や客人たちをまとめる太陽のような存在なんやけど、第二部では……。
この変化が、時間の経過の残酷さと美しさを同時に感じさせてくれます。
また、画家のリリー・ブリスコという女性の視点も重要です。彼女は芸術家として、ラムジー夫人の肖像を描こうとしているんやけど、なかなか完成させられない。
でも最後、十年の時を経て、彼女はついに絵を完成させます。このシーンは、芸術とは何か、人生とは何かを問いかけてくるような、深い余韻を残してくれました。
読み切るコツですが、私は数十ページ読んだ後「こりゃわからん!」となり、先に翻訳者である鴻巣友季子さんの「訳者あとがき」と、津村記久子さんの「解説」を読みました。
序盤は特に、大量の登場人物の名前が出てくる割に、それがどんな人なのか説明をしてくれないものだから心が折れそうになるんですが、
このあとがきや解説を読むことで、頭が整理できてよかったです。
そして一番大事なのは、無理しないこと。
『灯台へ』みたいな本は、「今すぐ理解する」ための本じゃなくて、「一生かけて付き合う」本なんやと思います。
今は20%しかわからなくても、来年読んだら30%わかるかもしれない。5年後に読んだら、全部わかるかもしれない。
私も読み切ったものの、すべてを理解できた気はしていません。だから、また時間が経ってから読み返してみたい。
モダニズム文学に興味がある人、ヴァージニア・ウルフの代表作を読んでみたい人、そして何より、人の内面や時間の流れについて深く考えたい人には、ぜひ挑戦してほしい一冊です。
もう100年近く前の作品なんですが、2024年、鴻巣友季子さんによる新訳版が出て話題となりました。
モダニズム文学
この作品は、モダニズム文学の金字塔です。
「モダニズム文学」って聞いて、「なにそれ?」って思った方もいるかもしれませんね。
簡単に説明すると、1920年前後、第一次世界大戦後のイギリスを中心に起こった、文学の流れのことです。
それまでの小説は、時間が順番に進んで、ストーリーがはっきりしていました。でもモダニズム文学は違います。
時間がバラバラに飛んだり、過去と現在が混ざったり。ストーリーよりも、人の「心の動き」を描くことを重視しました。
「意識の流れ」
特徴的なのが「意識の流れ」という手法。
例えば、授業中にこんなふうに考えることってありませんか?
「先生の話聞かなきゃ……でもお腹すいたな……昼ごはん何かな……あ、そういえば昨日見たアニメ面白かったな……」
こんなふうに、人の頭の中って、一つのことをずっと考えてるんじゃなくて、色んな考えがぐるぐる回ってますよね。これをそのまま文章にしたのが「意識の流れ」です。
第一次世界大戦後、ヨーロッパの人たちは「理性的に物事を進めてきたはずなのに、なんでこんな悲惨な戦争が起きたんだ?」って疑問を持ちました。
それで、「人間の心の奥底には、もっと複雑で理屈じゃ説明できないものがあるんじゃないか」って考えて、それを表現しようとしたんですね。
『灯台へ』は、まさにそのモダニズム文学の代表作です。
物語の構成
舞台はスコットランドの避暑地にある別荘。ラムジー一家が毎年夏を過ごす場所です。
物語は三部構成になっていて、第一部「窓」では、ある夏の一日が描かれます。ラムジー夫人を中心に、家族や客人たちの内面が丁寧に綴られていきます。
第二部「時は過ぎゆく」では、第一次世界大戦を挟んで十年の歳月が流れます。この部分がとても印象的で、人の死や家の荒廃が、まるで時の流れそのもののように淡々と語られるんよね。
そして第三部「灯台へ」で、残された家族が再び別荘を訪れ、十年前には果たせなかった灯台への航海を実現させます。
素晴らしい自然描写
ウルフの文章は美しくて、特に自然描写が素晴らしいです。
海の波、夕暮れの光、庭の花々。それらが登場人物の心情と重なり合って、詩的な世界を作り出しています。
正直に言って、難解です
ただ正直に言うと、この本、めちゃくちゃ読みにくいです。 私も最初読んだ時、何度も挫折しかけました……。
普通の小説のように「こういうことが起きて、次にこうなって」という明確なストーリー展開はほとんどありません。
また、『今どんな場面なのか』『誰の視点なのか』といった説明もありません。
急に過去に飛んだり、Aさんの視点で描かれていると思ったら、段落を変えることもなくBさんの視点に移っていたりします。
もともと海外文学って、神の視点で描かれることが多くて、日本文学よりも視点の移動が多いと思うんですが、『灯台へ』はもうそんな問題じゃないんです。
集中して読んでいないと、すぐに「なんのことを話しているんだろう?」と、物語から振り落とされます。
難解と言われるヴァージニア・ウルフの作品ですが、本当に難しかった。
でも、だからこそ価値があると思いました。
現代だからこそ読むべき作品
現代って、YouTube動画も、SNSも、漫画も、すぐに「わかる」「おもしろい」ってなるコンテンツばかりですよね。
しかし『灯台へ』は、すぐには理解できない。何度も読み返さないとわからない。
この「すぐにはわからない」っていう経験が、実はめちゃくちゃ貴重やなあと思いました。
現実世界って物語と違ってわからないことだらけじゃないですか。将来のこと、自分が本当にやりたいこと、親や友達など周囲の人の本当の気持ち。
『灯台へ』を読むのは、そういう「すぐにわからないものと向き合う練習」になるんだと思います。
ラムジー夫人
特に印象的だったのは、ラムジー夫人の存在感です。彼女は第一部の中心人物で、家族や客人たちをまとめる太陽のような存在なんやけど、第二部では……。
この変化が、時間の経過の残酷さと美しさを同時に感じさせてくれます。
また、画家のリリー・ブリスコという女性の視点も重要です。彼女は芸術家として、ラムジー夫人の肖像を描こうとしているんやけど、なかなか完成させられない。
でも最後、十年の時を経て、彼女はついに絵を完成させます。このシーンは、芸術とは何か、人生とは何かを問いかけてくるような、深い余韻を残してくれました。
読み切るコツ
読み切るコツですが、私は数十ページ読んだ後「こりゃわからん!」となり、先に翻訳者である鴻巣友季子さんの「訳者あとがき」と、津村記久子さんの「解説」を読みました。
序盤は特に、大量の登場人物の名前が出てくる割に、それがどんな人なのか説明をしてくれないものだから心が折れそうになるんですが、
このあとがきや解説を読むことで、頭が整理できてよかったです。
そして一番大事なのは、無理しないこと。
『灯台へ』みたいな本は、「今すぐ理解する」ための本じゃなくて、「一生かけて付き合う」本なんやと思います。
今は20%しかわからなくても、来年読んだら30%わかるかもしれない。5年後に読んだら、全部わかるかもしれない。
私も読み切ったものの、すべてを理解できた気はしていません。だから、また時間が経ってから読み返してみたい。
モダニズム文学に興味がある人、ヴァージニア・ウルフの代表作を読んでみたい人、そして何より、人の内面や時間の流れについて深く考えたい人には、ぜひ挑戦してほしい一冊です。

